似た者同士




気が付くと、いつも目で追っている。
理由は単純に、しょっちゅう高崎の近くにいるからだ。宇都宮にはそれが腹立たしくて仕方がない。スキンシップが激しいのか、やたらとべったりとくっついている。制服な前をはだけさせて、まるで娼婦のようだとすら思う。
高崎は高崎で、怖がりつつもまんざらでもなさそうだから、余計に苛立つ。自分よりも上司がいいと、言葉ではなく態度で示されているみたいで。
居たたまれなくなる。

「高崎、アイス食べたい」
「昨日買って差し上げたじゃないですか…!」

今日も上越は在来の事務室までやってきて高崎にアイスをねだっている。そのくらい自分で買えないのだろうか。高崎はあなたの財布じゃなです、と間に割って入りそうになるのを堪えて、何食わぬ顔で仕事を続ける。

「すぐ食べちゃったに決まってるじゃん。今日はダッツじゃなくてもいいよ。ガリガリ君で我慢してあげる」
「はあ…そのくらいなら」
「リッチのほうね」
「やですよ!」

イライラしてきた。堪らず睨み付けると、ふと顔を上げた上越と目が合った。
ふっ、と見下すような嘲笑を浮かべて、上越が宇都宮に向かって言う。

「…君にはあげないよ」
「いりません」

固く絞ったような声を出すと、高崎が「ケンカすんなよ!」と間に入った。

「お前の分も買ってきてやるから。ソーダでいいか?」
「だから僕はいらな、」

最後まで聞かずに、高崎は部屋から飛び出して行ってしまった。買ってくれるのはいいとして、二人だけで残さないで欲しい。
上越がわざとらしく、音を立ててイスの背もたれに身体を預けた。

「君、見すぎ」
「自意識過剰なんじゃないですか?」

咎める者もいないから存分に冷たく言い返すと、上越はおかしそうに喉の奥で笑った。

「何がおかしいんですか」
「知ってる? 僕たち、よく似てるんだよ」
「…知ってますよ、そのくらい」

言われなくてもわかる。それはもう、腹立たしいくらいに。
高崎を見ているはずが、隣の上越にばかり目が行っている。
同族嫌悪。
だから、いつも目が離せない。




2012.9.1
ツイッターで頂いたリク・宇上でした。ありがとうございました!